言祝ぎの子 漆 ー国立神役修詞高等学校ー



あの時志ようさんは言った。空亡を倒す時どちらかが死ぬ、と。この未来は変えられない未来なのだ、と。変えられないら未来のはずなのに、今志ようさんは死んだとされて、空亡は残穢となってあちこちに散っている。

つまり、もしかしたら。

志ようさんはまだどこかで生きているのかもしれない。

そして私と同じようにしてその話を聞いた芽さんは、母のように慕う志ようさんをどうしても救いたかった。そして今の私と同じように、志ようさんが生きている可能性に辿り着いた。


"芽さんがどうして私の命を狙うのか"。ずっとそれが分からなかった。けれど過去を見て、やっとその理由がわかった。

彼はおそらく、私を殺すことで志ようさんの命を救おうとしているんだ。


前にまなびの社で初めて伊也に会った時、彼女は私に対して"これから起きることぜーんぶ、あんたのせいやで?"と言った。

それはつまり、芽さんが私を狙うことにより周りの人達にも危害が及ぶ。周りの人達が傷付くのはすべて私のせいだったということだ。

方賢(ほうけん)さんが道を踏み外して二度と外を歩けなくなったのも、神修の学生たちが応声虫により命の危険にさらされたことも、八瀬童子の里が襲われたことも、聖仁さんが亡くなったことも。

芽さんが私を殺そうと仕組んだことで、皆はそれに巻き込まれた。

全部全部全部、私のせいだったんだ。