言祝ぎの子 漆 ー国立神役修詞高等学校ー


「ここ半年、先見の明で同じ未来をほぼ毎日見ていたの。審神者の装束を着た私が、空亡と相打ちになって死ぬ夢よ」

「うそ……そんな」


お母さんがこぼれ落ちそうなほど目を見開いた。瞳が激しく揺らいでいる。


「でも少し前からね、別の未来も交互に見るよになったの。内容は同じだけれど、そこで死ぬのは私じゃなくて、神修の制服を着た16歳くらいの女の子────大きくなった巫寿だった」


お母さんが手のひらで口を抑えた。

お母さんと志ようちゃんの話は難しい。なんの話をしているのか分からない。けれど私の名前が沢山呼ばれているから、きっと私の話なんだ。


「何百回と同じ未来を見た。きっとこの未来は変えられないんだと思う。神職たちは疲れきっているわ。彼らだけじゃ絶対に空亡を討伐することはできない。トドメを刺すのは間違いなく私か、大きくなった巫寿。そして、トドメを刺した者は相打ちになる。つまり────」


お母さんの瞳から大粒の涙がこぼれ落ちた。いやよ、喉の奥から絞り出た言葉に志ようちゃんは小さく首を振った。


「空亡を倒すには、私か巫寿のどちらかが死ななければならない」


お兄さんが握っていた私の手をするりと解いた。顔を上げるともう既にお兄さんは背を向けて歩き出していた。

廊下が軋んで、部屋の中にいた二人がハッと振り返った。志ようちゃんがくしゃりと顔を歪めて私に手を差し出す。戸惑いながらもその腕に抱かれた。


「巫寿。可愛い巫寿。どうか私を許して。巫寿、大切な子。私たちの希望」


ほっぺたに志ようちゃんの涙が落ちて冷たかった。後ろからお母さんに抱きしめられて苦しかった。ふたりが泣いているのが悲しくて、私も涙がこぼれた。