言祝ぎの子 漆 ー国立神役修詞高等学校ー


「どうして緑色なの?」


お兄さんの袴を指さして首を傾げる。


「神修の学生だからだよ。これは制服」

「セイフク?」

「そ。制服」


それが何を意味するのは分からなかったけれど、わかった振りをして「ふーん」と答える。お兄さんに手を引かれてキシキシ音を立てる廊下を歩いた。


「お兄さんだれ?」

「俺は神々廻(ししべ)(めぐむ)だよ。宮さまのところでお勉強してるんだ。ミコトちゃんのお母さんも宮さまに会いに来たの?」


みやさま?と首を傾げる。

ここは志ようちゃんのお家だ。志ようちゃんのお家には志ようちゃんと白いお兄さんしかいない。


「お母さんは、しようちゃんに会いに来たんだよ」

「なるほど。君のお母さんが、審神者さまがよくお話されていた(せん)ちゃんか」


お兄さんは納得したようにひとつ頷いた。志ようちゃんの部屋が見えた。障子はすこしだけ開きっぱなしになっていた。声をかける前にそっと覗き込む。

私がお母さんにひざ枕してもらっている時みたいに、志ようちゃんがお母さんさんのひざに顔を伏せていた。志ようちゃんの肩が震えている。

志ようちゃん、泣いてるの……?


「泉ちゃん。ごめんなさい。ごめんなさい、私はどうしたら」


大人の人が泣いているのは初めて見た。驚きと困惑でお兄さんを見上げる。お兄さんは真剣な顔で部屋の中を覗き込んでいた。


「志よう、私を見て。大丈夫だから私に話して」

「私を嫌いにならないで。どうか私を許して」


お母さんは困ったように志ようちゃんの背中を撫でた。