「お星さん昇った 遊びましょ 妖狐コンコン こんばんは」
志ようちゃんとお母さんはなんのお話をしているんだろう。
「お月さん沈んだ また明晩 提灯小僧と はよ帰ろ」
志ようちゃん、ちょっと元気がないように見えたな。
「お日さん照った ねんねこりん 目目連の こもりうた────つまんなーい」
歌い終わると同時に唇を尖らせ伸びをする。足をバタバタと振って履いていた草履を地面に落としたその瞬間。
「わ、ビックリした。どこの子? どうやって入ってきたの? 駄目だよ、御神木さまに登っちゃ。ほら降りておいで」
足元からそんな声がして見下ろす。緑色の袴を履いたお兄さんが、目を丸くしてこちらを見上げていた。
ほら、と脇に手を差し込まれ抱き上げられた。落とした草履を拾ったお兄さんは私にそれを履かせて土の上に下ろした。
「君お名前は? いくつ? お父さんかお母さんは近くにいる?」
お母さんや志ようちゃんからも、この木には登ってはいけないと前々から言われていた。登っているのが見つかって怒られると思った私は、きゅっと身を縮めて答える。
「しいなみこと、みっつ……おかあさんときたの」
お名前ちゃんと言えて偉いね、お兄さんはそう笑ってぐりぐりと私の頭を撫でた。怒られなかったことにほっと息を吐く。
私の手を握って歩き出したお兄さんを見上げた。志ようちゃんのお家で白いお兄さん以外に男の人と会うのは初めてだった。



