言祝ぎの子 漆 ー国立神役修詞高等学校ー


瑞祥さん、来てないんだ。

それにちょっと安心してしまった自分がいて唇を噛み締める。

神修へ戻ってきてから瑞祥さんとは一度も顔を合わせていない。帰ってきているという話は聞いていたけれど、会いに行くことが出来なかった。

どんな顔をして合えばいいのか分からなかった。

流れるように祭壇と棺の前で手を合わせて私たちは外に出る。最後の別れは呆気ないものだった。


「帰りの車、1時間後だって」


泣き腫らした顔としゃがれた声で、来光くんが乗り場から戻ってきた。

私はゆっくり立ち上がって歩き出す。


「巫寿ちゃん? 次一時間後だよ」


来光くんにそう声をかけられひとつ頷く。


「約束があるの。みんなは先に帰って」

「でも危ないよ」


恵衣くんが立ち上がって私の手を掴んだ。赤い目でじっと私を見つめ「その人と合流するまで一緒にいる」と答える。小さく首を振った。


「大丈夫。会うのは巫女さまだから。もう来てるって連絡もあったし」


そっと恵衣くんの手を解く。皆の不安げな目を背中に感じながら歩き出す。

待ち合わせ場所に指定した正面の鳥居の下にはもう既に相手の姿があった。


本当はもっと早くにこうすべきだったのかもしれない。

でももし私と彼に何らかの繋がりがあるとして、あの言葉が事実だったとしたら、これ以上悲しいことが起きる前に私は知らなければならない。