恵衣くんの咄嗟の判断で、私たちはわくたかむの社へは帰らずかむくらの屯所へ駆け込んだ。
丁度屯所へ来ていた禄輪さんは屯所へ飛び込んできた私たちに酷く驚き、そしてあまりにも動揺する私たちにすぐに何かあったのだと悟ったようだった。
恵衣くん以外の私たち三人は、うまく説明ができずただボロボロと涙をこぼすことしか出来なかった。張り裂けるような胸の痛みに喘ぎ、自分の無力さに血が滲むほど拳を握りしめた。
恵衣くんから事情を聞いた神職さまたちが血相を変えて屯所を出て行った。私たちはそれをただ見ていることしかできなかった。
気が付けば深い眠りについていた。このまま目が覚めなければいいと思った。全部悪い夢だと思いたかった。
その日、私たちは大切な人を失った。
誰よりも賢く誰よりも優しく、誰よりも勇敢な人だった。



