言祝ぎの子 漆 ー国立神役修詞高等学校ー


喉の奥に鉄の味が広がる。息ができない。何も見えない。上手く走れているのかも分からない。全身を引き裂かれるような胸の痛みに喘ぐことしかできない。

どうして? どうして? どうしてどうしてどうして。

だってほんの少し前まで皆でこれからの話をして、だってほら、瑞祥さんと同棲するんだって、あんなに嬉しそうに話していたのに。

拝殿の階段にだらり力なく垂れ下がった手が見えなくなっていく。


「いや……いやぁッ!! 聖仁さんッ!」

「見るなッ!」


強く手を引かれて前を向いた。

その拍子に温かい雫が額に当たる。私の涙じゃない。もちろん雨も降っていない。

辛いのも泣きたいのも悔しいのも、私だけじゃない。

歯を食いしばって前を向いた。引かれる手を強く握る。それに応えるように握り返されて、溢れた涙は腕で拭った。