言祝ぎの子 漆 ー国立神役修詞高等学校ー


聖仁さんは静かに横たわっていた。

目は半ば開かれ、焦点を失ったまま天井を見ている。口元はわずかに開き、息を吸い込む途中で止まったようだった。

頬は血の気を失い、肌の下に薄い灰が差しているように見えた。髪の一本一本までが重たく沈み、指先は奇妙に整然としている。

衣服の皺や、床との接点に溜まった影ばかりがやけにくっきりして、その静けさがかえって現実を突きつけていた。

息をのんだ瞬間、自分の喉がひどく乾いていることに気づく。周囲の音が遠くなり、耳の奥で自分の鼓動だけが大きく響いた。

目の前に横たわるのは、"死"以外のなにものでもない。

死んでいる。紛れもなく、もう聖仁さんの魂はその体の中にはなかった。

それでも、ただ見つめるしかなかった。

あまりにも唐突で理解が追いつかず、ただ目の前の事実をその目で確かめることしかできなかった。


「今宵も、誠に良い月夜で」


拝殿の奥の暗闇から、ギッギッと床板を踏みしめる音が響いた。

闇の中から現れたその人物に、両の手のひらが震える。間違いなくそれは、憎しみと怒りからくる震えだった。

山伏の装束に錫杖を持ったその男、前に会ったのは八瀬童子一族の里で黒狐族の襲撃に会った時だった。

その男は、烏天狗の妖。



「────天司(てんじ)ッ!」



そう叫んだ自分の声は、これまでに無いくらいに呪に染まりきっていた。