「空亡の正体が分かったからって、まだ陽太くんの幽霊の件は片付いてないからね。捜査はまだつづけなくちゃ」
聖仁さんの言う通りだ。もともとここへ来たのは少年の霊の目撃情報があったからだ。その霊が一体何者なのかはまだ解決していない。
空亡の回収に集中していたせいでそっちの調査は何も出来ていなかった。
拝殿の扉閉めるよ、と声をかけた聖仁さん。ギィィと扉が音を立てる。
「実習期間も残りわずかだし、皆で協力して最後まで────」
不自然に言葉を止めた聖仁さん。
扉が上手く閉まらないのだろうか。手伝った方がいいかな?
ゆっくりと立ち上がって伸びをする。
次の瞬間。
「────掛けまくも畏しき、冥柱 穢れ穿ち 瘴気遍く 吹き渡りて 身を裂かしめよ 御霊返らず 穴の内に 影徹らし 呻吟せよ 呻吟せよ」
不協和音だった。古びたガソリンみたいに粘着質に体に纏わりつき、背筋がゾッとする音。全身の肌が粟立って、一瞬息の仕方を忘れる。
私たちの誰でもない第三者の声。
あが、と喉の奥から絞り出したようなうめき声とともに、大きなものが倒れるような音がした。みんながいっせいに振り返る。
拝殿の扉の前に、仰向けになって転がる聖仁さんの姿があった。
「聖仁ッ……!?」
一番に動き出したのは亀世さんだった。弾けるように飛び出しそばに膝を着く。少し遅れて私も駆け出した。



