「────了解。ありがとね嬉々、助かったよ。え何? 今度スッポン奢れって? もー、分かったよ」
通話終了ボタンを叩いた薫先生はフゥと深く息を吐きだすと、疲れたように首を回しながら振り返った。
拝殿の階段に腰掛けていた私たちは、「どうだった?」と先生のそばに駆け寄る。
笑っているのか困っているのかよく分からない顔をした薫先生は、不安げな顔をする聖仁さんの頭をグシャグシャと撫で回した。
「前代未聞のお手柄だよ、聖仁」
わぁっと歓声が上がる。手柄を上げた当の本人はまるで他人事のようにぽかんとしている。
「嬉々に神修内に保管されている空亡の残穢で失せ物探しを試してもらったら反応があった。もう少し検証は必要だけど、ほぼ百で辰巳陽太は空亡だ」
ぶるりと震えたのは興奮か恐怖か。とにかく私たちがとんでもない事実にたどり着いてしまったということだけはよく分かる。
「これ、もし聖仁が神職だったら無条件で一、二階級昇進と褒賞授与レベルだからね。いや、もはや学生だから何もナシとかありえないよ。明日俺から本庁に掛け合ってみる」
薫先生に強く肩を叩かれて、やっと実感が湧いてきたらしい聖仁さんの頬が興奮で赤くなる。
「いや、でも……ここまでたどり着いたのは皆と捜査したからで」
「そうだな。残穢を回収したのは私だから手柄の半分は私によこすべきだな」
「俺も板でぶちのめすの手伝ったぞ! せめて褒賞でたら牛タン奢ってくれ!」
好き勝手言うふたりにくすくすと笑う。恵衣くんが聖仁さんに群がる二人を蔑みの目で見ていた。



