「聖仁さん……?」


そっと声をかけてはみたが、集中しているのか私の声は届いていない。ブツブツと何かを呟く。頭の中を整理しているらしい。


「ねぇ、皆」


顎に手を当てたままゆっくりと顔を上げる。


「俺たちもしかして、根本から探すものを間違っていたんじゃないかな」


唐突な発言にみんなは顔を合わせた。意味がわからずに首を捻る。

根本から間違っていた?


「陽太くんは失せ物探しの祝詞に反応がなかったから、神隠し事件として捜査するようになったんだよね」

「だな」


亀世さんが相槌を打つ。

陽太くんが行方不明になったあと一通り現世の警察側で捜査が執り行われ、失踪した日に起きた山火事が空亡によるものだと発覚したことで本庁側へ捜査の依頼が回ってきた。

そして失せ物探しの祝詞で現世で反応が確認されず、神隠し事件と認定されたという経緯は報告書で確認済みだ。


「もしも陽太くんが山で消えた時点で亡くなっていたりしたら、失せ物探しじゃ反応しないよね? だって、その時点で探しているのは"生きている辰巳陽太"なんだから」


ばくん、と心臓が跳ねる。耳の横で拍動しているかのように鼓動がうるさい。頭はとてつもない勢いで色んな可能性を計算し始める。