「鬼は鬼ですけどね」


恵衣くんの冷静な一言に、ぷッと吹き出す。苦い顔をしながら私の隣に並ぶと「何笑ってんだよ」と私を睨む。

そうだよね、恵衣くんにとってはどんな事情があろうと鬼が鬼であることには変わらないもんね。

俺も触っていい?と聖仁さんから小瓶を受け取った泰紀くん。気持ち悪ぃ、と肉片に顔を顰めて薫先生を見上げる。


「そういや散った空亡の残穢ってどうやって探してるんだ? 失せ物探しで見つかるもんなのか?」

「それがさぁ、空亡って妖の名前であって個体名ではないから、どうやっても失せ物探しで反応しないんだよね。だから今回みたいに誰かが偶然発見して回収するしか術がないわけ」


薫先生はため息をこぼす。

妖は私たち神職ですら把握していないほど数多くの種属が存在する。

八瀬童子の鬼市くんや信田妻狐の信乃くんみたいに、空亡にも個体名があればより絞れるのだろうけど、"空亡"だけじゃダメらしい。


「失せ物探しって結構不便なんだな」

「あはは、そうだね。詳しい情報がないと上手く発動しないし場合によっちゃ結構不便かもね」


ふーん、と唇を突き出すと聖仁さんへ小瓶を返した。受け取った聖仁さんは、ふと真剣な顔になって小瓶を見つめる。


「詳しい情報……」


ぽつりと呟く。