なんだかちょっと童鬼が可哀想になってきた。

出すぞー、と呑気な掛け声とともにゆっくりと腕を引き抜いた。きゅぽんと口から拳を引き抜き、握っていた拳をひっくり返して開ける。

思わずウッと口元を押えた。

言葉通りそれは肉片だった。柔らかい質感の塊は赤黒い血にまみれており、これまでぼんやりしていた「自分の身を八つ裂きにした」という状況が鮮明になりかけて慌てて頭を振る。

残穢はまとわりついてはいるものの、それ以外は何も感じない。それが空亡の恐ろしさなんだろうか。


「ほらよ、回収完了」


小瓶の蓋をキュッと閉めた亀世さんはそれを掲げて軽く振った。そんなに雑に扱っていいものなんだろうか。


「手拭きたいから持っててくれ。落とすなよ」


投げられた小瓶を悲鳴混じりにキャッチした聖仁さん。投げるなよ!と叱りつける。

額の汗を拭った聖仁さんは少し怖々と小瓶の中をのぞき込む。

肉片は小指の爪くらいのサイズだ。瓶の周りには漏れた残穢がまとわりついており禍々しい。


「こんなサイズでも3人がかりで気絶させられる程度ってことか……恐ろしいな。この子も苦しかっただろうね」


聖仁さんはすやすやと眠る童鬼を目を細めて見下ろした。

とても穏やかな寝顔だ。先程まで暴れまわっていた鬼には見えない。