男子陣が肩で息をしながら集まってきた。一歩引いたところで止まった恵衣くんに苦笑いで「お疲れ様」と伝える。

聖仁さんが隣に立った。頬に切り傷があって白衣があちこち汚れてはいるものの大きな怪我は無さそうだ。


「巫寿ちゃんたちは怪我はない?」

「あっはい。薫先生が結界を張ってくれたんで」


良かった、と笑ったあと疲れたように深く息を吐く。


「それにしても聖仁さん、さっきの鎮魂調伏祝詞(ちんこんちょうぶくのりと)はどうやったんですか? あれって鎮魂した後調伏してしまう祝詞なのに、今回はダメージを与えただけで調伏しきってないですよね」


聖仁さんが奏上した鎮魂調伏祝詞は、その名の通り荒ぶる魂を鎮めた後、その魂を祓除する効果がある。

けれど童鬼は祓除されずに気を失う程度のダメージを受けただけだ。聖仁さんが失敗するはずがないし、一体どうやったんだろう?


「声色と発音を変えただけだよ。帰ったらやり方教えてあげるね」


サラッと言ってのけたけれど、声色や発音を調整して祝詞の効果を操作するなんてそう簡単にできるものではない。改めて聖仁さんの規格外っぷりを思い知る。

と、その時。ヒィッと泰紀くんが怖いものでもみたかのように悲鳴をあげた。視線を向けると、ちょうど亀世さんが童鬼の口の中に腕を突っ込んでいた。


「お、多分これだな。薫先生、これって直に掴んでも問題ないのか?」

「基本的にはね。でも何かあってからじゃ遅いからすぐこれに入れて」


差し出された小瓶の蓋を口で外した亀世さん。「口臭いなお前。普段何食ってんだよ」と童鬼の頭をあいた手で叩く。