前回の神社実習で餓鬼と相対したときもかなり顔が強ばっていた。あの恵衣くんが顔にも態度にも出すくらいだから、よっぽど苦手なんだろう。
それでも必死に向き合っているのがなんとも涙ぐましい。
応援してあげたら?と薫先生。
「応援で何とかなるものですかね……」
「そりゃ可愛い女の子に応援されたらやる気出るでしょ。おーい恵衣〜、巫寿が"恵衣くん頑張って〜!格好いい素敵〜!"だって」
九割はからかいの声色だ。しかも後半は激しく脚色されている。
「うるさい外野ッ!」
目上の人には敬語を徹底している恵衣くんが罵倒したうえに噛み付く勢いで怒鳴った。よっぽど切羽詰っているらしい。
薫先生はそれがツボに入ったらしくあははと笑い転げる。本当に人が悪すぎる。
泰紀くんが床板をメキメキッと剥がしとった。ちょうど両手を広げても少し余るくらいの大きさだ。それを両手で構えてブンブンと振り回し、「セイヤッ」という気合と共に鋭い突きを繰り出した。
さすが槍術部。突っ込むのはやめよう。
呻き声をあげてヨダレを飛ばした童鬼が2メートルほど後ろに吹っ飛び床に転がる。
「呪詛鬼神に帰命し奉る 一切祈願成就……!」
すかさず恵衣くんが祝詞を叫ぶ。若干顔を背けているように見えるのは気のせいだろうか。
童鬼がその場に拘束されたように固まった。鋭い牙をむき出して地を這うような呻き声を上げる。
ナイス!と叫んだ聖仁さんが胸の前で透き通った柏手を打った。



