言祝ぎの子 漆 ー国立神役修詞高等学校ー


社殿自体はまだ形が残っているものの、虫食いや雨風に晒された影響か所々に隙間があって月明かりが漏れていた。

床に転がる瓦礫と隙間から生えてきた雑草を避けながら、拝殿を進み本殿へ繋がる廊下を渡る。

本殿へ通じる扉の前にたったその時、ドゴォンと激しい爆発音とともに足元が揺れた。ふらつく私たちの二の腕を咄嗟に掴んだ薫先生。


「ご苦労。よくやった」

「あのねぇ亀世、俺一応先生だからね?」


呆れ顔の薫先生をよそに、亀世さんが本殿の扉を押し開ける。

その瞬間、亀世さんの目の前に赤黒い何かが飛び出してきた。ひっと息を飲んだその瞬間、白乳色の結界が白光りして静電気を数十倍に大きくしたような電気が弾ける音が響く。赤黒い何かは耳障りな悲鳴をあげて飛び退いた。


「うおっ、亀世さん扉あけんなよ! 飛び出して行っちゃうだろ!」

「すぐ閉めて!」


泰紀くんと聖仁さんが本殿の祭壇の前から叫ぶ。言われた通りすぐに中へ入って扉を閉める。蝶番が断末魔のような音を立てて扉がばたんと閉まる。


「やってるやってる」


薫先生はどこか楽しそうにそう零した。

暗闇に目が慣れていないせいでよく見えない。ポケットからスマホを探り当ててライトをつけた。白っぽい光で気配の濃い目の前を照らす。

赤黒い足が見えた。人の足に見える。6歳の子供ぐらいの大きさだろうか。けれどふくらはぎの筋肉は盛り上がっており筋張っている。

ゆっくりとライトを上げていく。酷く汚れたボロきれのような布を腰に巻いている。腹も赤黒い。