「────恵衣! 恵衣! そっち行ったつってんだろ!?」
「恵衣頑張れ! お前ならできるから!!」
数分後、準備万端気合十分で廃神社へ乗り込んだ私たち。修祓担当の男子陣が崩れかけた本殿に入っていって数分後、力がぶつかり合うような激しく交戦する音と共に、聖仁さんと泰紀くんの罵倒に近い励ましが聞こえた。
外で待機している私と亀世さんには、中で何が起こっているのかが分からず互いに顔を見合せた。
「あはは、やっぱ駄目だったか」
お腹を抱えてケラケラ笑う。薫先生はなかで何が起きているのか分かっているらしい。
「俺が守ってあげるから二人とも見に行かない? 面白いもの見れるよ、きっと」
そう言って何かを呟いたあと胸の前で柏手を打った薫先生。次の瞬間、私と亀世さんの頭の上から蜂蜜を垂らすように白乳色の薄い膜がゆっくりと降りてくる。
そっと手で触れようと伸ばしてみるけれど、私の手を避けるように幕が広がる。中は冬の朝一番に吹く風のように濁りがなく清廉だ。
薫先生が結界を貼ったんだろう。
さあ行こう、と私の背中を押した薫先生はこれまでにないくらい生き生きした表情だ。
朽ち果てた賽銭箱と転がる本坪鈴を横目に、拝殿の階段に足を伸ばす。今にも足場が抜け落ちそうなほど床がぶよぶよと柔らかくなっており、軋む音もなんだか湿気ている。



