階下で私の事を待っていたのは、予想外の人物だった。


「久しぶり! 元気にしとった?」


にかっと笑うその人物。嬉しくて思わず前のめりになり最後の一段踏み外す。転がり落ちてきた私をキャッチしたその人は豪快に笑って私の背中を叩く。

心配はしてくれないんだ、と心の隅で思いつつその人を見上げて笑った。


()らくさん! お久しぶりです!」


ショートカットの髪を耳にかけ直した志らくさんは目を細める。


「いろいろ噂に聞いて心配しとったけど、元気そうで安心したわ」

「ご心配おかけしてすみません。この通り、元気です」

「ええこっちゃ、ええこっちゃ。ほな弟子の元気も確認取れたし、早速手伝うてもらおか」


私の肩をがっちり掴んだ志らくさんは、「こっちやでぇ」と笑いながら歩き出す。

なんだかその笑みが恐ろしいのだけれど気のせいだろうか。ていうか、そもそもどうしてかむくらの屯所に志らくさんが?


質問しようとしたところで「志らく〜ッ!」と彼女の名前を呼ぶ怒鳴り声が台所の方から聞こえてビクリと肩を跳ね上げる。

その怒鳴り声も聞き覚えのある声だ。


「あ、あの志らくさん?」

「話も説明もあと!」


ええ?と声を上げる。グイグイと背を押されて、転がるように廊下を走った。