言祝ぎの子 漆 ー国立神役修詞高等学校ー


空亡戦において神職たちによって追い詰められた空亡が、自分の体を八つ裂きにしてその肉片を方々に散らせたことで逃げ果せたのは誰もが知っている事実だ。

その何割かは当時の審神者志ようさんの活躍により祓われたものの、まだ大半はこの世界のあちこちに残穢として存在している。

小さくなったとはいえその力は健在で、どれほど力のある神職でも祓うことはできない。さらに残穢だけならば攻撃してきたり人に害を与えることはないものの、もし妖がその残穢を体内に取り入れれば、その妖は空亡の力の一部を自分のものにできる。

それゆえ放置することは大変危険で神職たちはその空亡の残穢を回収して回り、社の奥深くに封印しているという。

薫先生が度々空亡の残穢回収に派遣されていたのは知っていたけれど、まさかそのタイミングで出会うなんて。

さすがにそんなに危険な現場には、あの薫先生でも生徒を連れて行ったりするはずが────。


「まぁ大丈夫か、俺がいるしね。よし、冬の特別授業だ。皆で空亡の残穢に挑戦してみよう! あはは」


あははじゃねぇよ!と泰紀くんの鋭いツッコミが炸裂する。泰紀くんが言わなければ私が言っていたところだった。

空亡の残穢回収だなんて、間違いなく私たちみたいな学生が関わっていい任務じゃない。

ですよね聖仁さん!と同意を求めるように視線を送ると、何かを考え込むように斜め下を見つめている。


「俺、やります」


聖仁さんよりも先に答えたのは恵衣くんだ。

え!?と声を上げると、ちらりと私を見て直ぐに薫先生へ視線を戻す。