言祝ぎの子 漆 ー国立神役修詞高等学校ー


幽霊が目撃されたのは夕方5時から夜9時までの間と、丑三つ時と呼ばれる午前2時前後の時間帯だ。

私たちに深夜の活動は認められていないので、丑三つ時の方は地元の神職さまに見回りをお願いしている。

少し前に夕日が隠れ、街は点滅する頼りない街頭でぼんやりと照らされている。しんと静まり返った空気はどこか湿っぽくて重苦しい。

カーテンの隙間から漏れる温かい光とバラエティー番組の賑やかな声、美味しそうな肉じゃがの匂いに「いいなぁ」と零しながらマフラーに顔を埋め冷えきった鼻をすすった。


「さっむ……」


白衣の上からダウンコートを羽織った亀世さんがポケットに手を突っ込んで肩をすくめる。


「私も巫寿みたいにマフラーしてこれば良かったな」

「お、じゃあ俺の貸してやるよ亀世さん」


黒いネックウォーマーを着けていた泰紀くんがズボッと脱いで亀世さんに投げる。


「泰紀は寒くないの?」


カイロを拝むようにシャカシャカ振っていた聖仁さんが目を丸くする。


「俺は筋肉着てるからな! 皆も帰ったら一緒に筋トレするか?」

「お前、無駄にでかいだけじゃなかったんだな」

「おいこら恵衣、今なんつった!?」


カーンと鳴り響いたゴングの音色に、すかさず聖仁さんが二人の襟首を掴んで引き離す。流石だ。