急ぎの仕事を頼まれてしまい昼食のタイミングを逃してしまった。みんなで交互に休憩を取り、私は亀世さんと一番最後に昼食を取ることになった。

昼食の席で話題に上がったのは、亀世さんが鋭意研究中の黄泉返りの薬についてだ。


「薬はほぼ完成しているはずなんだよ。ただ何かがひとつ足りないらしい。本当にあとちょっとなんだがな」

「亀世さん……それ完成させたら本当に本庁に捕まっちゃいますよ」

「バレなきゃいいんだよ。巫寿が黙っててくれれば私は捕まらない」

「それ私も共犯者になりませんか?」


今日の昼ごはんである鳥照り丼をつつきながらそんなやり取りをしていると、テーブルの隅に寄せていたスマホがブルブルと震えて着信を知らせる。

ちらりと画面を確認するとトークアプリで瑞祥さんから着信が来ていた。


「私のことは気にせず出ればいい」


お言葉に甘えて通話ボタンを叩く。


『お、もしもし巫寿? ごめんな、奉仕中に』


電話口からはいつもと変わらない瑞祥さんの声。


「こんにちは瑞祥さん。ちょうど遅めの昼休憩中なんで大丈夫ですよ。どうかしましたか?」

『いや、大した用じゃないんだけどさ……聖仁は近くにいるか?』

「聖仁さんですか? いえ……聖仁さんは今社務所の会議室で奉仕中です」

『朝からちゃんと奉仕してんだな?』


変な質問だなと思いつつ「はい」と答えると、瑞祥さんは電話の向こうで安堵したように深く息を吐いた。