「瑞祥がいるから頑張れる。瑞祥の存在が俺を強くしてくれる気がするんだよね」
聖仁さん……それ以上強くなるなんて、どこを目指してるんですか。
なんてツッコミは飲み込んで、優しい目をしてマグカップのふちを見つめる聖仁さんに微笑む。
前にかむくらの神職さまたちが言っていた。激化する空亡戦で心も体も疲弊したとき、支えになったのが大切な人の存在だったと。その人たちの顔を思い浮かべれば、力がみなぎったのだと。
きっと聖仁さんの中で瑞祥さんも、ただの恋人という段階は通り超えて、そういう存在になったのだろう。
「羨ましいです」
ぽつりと呟いた声は聖仁さんに届いていたらしい。
顔を上げて目を瞬かせたあと、聖仁さんが頬杖をついて目を細める。
「巫寿ちゃんにそのうちもできるよ、そういう人。たぶん割と近いうちに」
だといいんですけどねぇ、と息を吐いた。
現状好きな人もいなければいい感じな雰囲気の人もいないので、しばらく見込みはなさそうだけれど。
「さ、明日は陽太くん捜査もあるし、もう休みな」
「聖仁さんはまだ寝ないんですか?」
「俺はこの後ちょっとだけ電話する約束してるから」
誰とは言わなかったけれど、瑞祥さんとお揃いのホーム画面を私に見せてスマホを軽くゆらゆらさせる。
相変わらずラブラブだな、と笑って「おやすみなさい」と小さく頭を下げた。



