言祝ぎの子 漆 ー国立神役修詞高等学校ー


色んなことがあったせいかその日の夜は中々寝付けず、同室の亀世さんを起こさないようにそっと部屋を抜け出した。

ホットココアでも作ろうと台所へ顔を出すと、ダイニングテーブルで参考書を広げる聖仁さんがいた。


「あれ、巫寿ちゃん? どうしたの? 眠れない?」

「あれこれ考えてたら眠れなくなっちゃって、ホットココアでも作ろうかなって」

「お、いいね」

「聖仁さんも飲みますか?」


ご相伴にあずかります、と丁寧に頭を下げる聖仁さんに小さく笑って頷く。手伝うよと席を立った聖仁さんにマグカップをお願いした。


「どうして台所で勉強してたんですか?」

「節電だって居間のコタツと暖房の電源を落とされちゃって。台所は交代で夕飯を食べに来る神職さまたちがいるから、灯油ストーブつけてても怒られないから」


なるほど、と苦笑いを浮べる。

それにしても聖仁さん、こんな時間まで勉強してるんだな。

恵衣くんといい聖仁さんといい、優秀な人ほど私たちの見えないところで沢山努力をしている。私も少しは見習わないといけないなぁ、と肩をすくめる。

鍋の牛乳がボコボコと音を立て始めた。ヘラでゆっくりとかき混ぜる。


「そういえば巫寿ちゃん、今日の午前中は恵衣と二人でおつかい頼まれてたんでしょ? どうだった?」


真言権宮司は私たちが不在の理由をおつかいということにしていてくれたらしい。

隆永宮司のことは秘密にする約束なので「特に何もなかったですよ」とマグカップにココアの粉を入れながら答えると「ふーん?」と何やら納得がいかなさそうな声で相槌を打つ。