言祝ぎの子 漆 ー国立神役修詞高等学校ー


芽さんがわくたかむの社の宝物殿から國舘剣を盗み出し、それで父親である隆永宮司と祖父母を切ったという話だったけれど、そもそも國舘剣は眞奉が私の元に勝手に持ってくるまで、かむくらの社の御祭神さまの元にあった。

つまりわくたかむの社にある刀は偽物ということだ。

ともなれば社の人間がその事実を知らないはずがない。けれども芽さんはその刀が國舘剣だと思って盗み出した。

ということは刀が偽物であるということは限られた人間しか知らされていないということ。それを知っているのは、社の宮司だけだということだ。


「あなたは神々廻芽が剣を盗んだことを知って、何かに気付いたんじゃないですか。だからあの社を出た」


立ち上がった恵衣くんが、そう言いながら剣を握る私の手にそっと触れる。意図を理解し、直ぐに刀身を鞘に収めた。眞奉に渡せば彼女はサッと私の影に消えていく。

隆永宮司は小さく息を吐いて首の後ろを摩った。その仕草も、薫先生によく似ていた。


「……困ったな。一体君は何者なんだ」


胸の前でぎゅっと手を握った。


「椎名巫寿です」

「椎名……嘘だろ、君はあの二人の娘なのか? つまりあの時の子か!」


あの時がいつを指すのかは分からないけれど、両親のことは知っていたらしい。