隆永宮司は迷うことなく厨房へ入っていく。
「店の暖房つけたくないから、こっち来てくれ」
店と厨房を区切る暖簾からひょっこりと顔を出し、ショーウィンドウの前に佇む私たちに手招きした。
お邪魔します、と小さく頭を下げて厨房に入った私たち。
やる事あるから座って待ってろ、とどこからかパイプ椅子を引っ張り出してくると厨房の隅っこにふたつ並べ、灯油ストーブを傍において電源をつける。
「これ、俺のだけど膝にかけときな」
脱いだ羽織を私に手渡した隆永宮司は目じりに皺を作って笑うと、慣れた手つきで袖をたすき掛けにして流し台の前に立った。
なんと言うか……スマートだ。
感心しながらその背中を眺めていると、やけに隣から視線を感じて目を向ける。恵衣くんが私の手元の羽織をじっと見つめていた。
「寒いの? 恵衣くんが使う?」
「馬鹿なのか? いる訳ないだろ!」
たちまちギュンと眉を釣りあげた恵衣くん。気を遣って聞いただけなのに怒られてしまった。
人の好意を馬鹿呼ばわりするなんてひどい。
私たちのやり取りが聞こえていたのか、隆永宮司はカラカラと笑った。笑い方が薫先生そっくりだ。
手際よく小豆を鍋に移した宮司は、ちらりとこちらに視線を向ける。
「で、大福買いに来たって訳じゃないんだろ。なんの用だ? 俺を社に連れ戻すつもりか?」



