言祝ぎの子 漆 ー国立神役修詞高等学校ー


その次の日、権宮司から一日外出する許しを得た私と恵衣くんは朝から電車に揺られていた。


「ごめん恵衣くん。付き合ってもらっちゃって」


後ろへ流れていく車窓の景色から、隣に座る恵衣くんに視線を移す。タブレットで報告書を読んでいた恵衣くんはちらりとこちらを見た。

今日はいつもの袴姿ではなく、黒のデニムに白いシャツ、厚手のロングコートという私服姿だ。高校生の服装にしては大人っぽく、品があり恵衣くんらしい。

そういう私も今日は私服姿だ。

恵衣くんはひとつ息を吐いてまた画面に目を向ける。


「必要なことなんだろ」


端的な問いかけにゆっくりと頷く。


「うん」


神職の勘は当たる。もし私の勘が正しければ、"あの人"はあそこにいる。そして多分、私たちの知らない重要なことを知ってるはずだ。

これまで私は自分の勘が当たったと実感する出来事が一度もなかったのだけれど、昨日権宮司から聞いた話と私の予想を恵衣くんに伝えたところ頭ごなしに否定されることはなかった。

恵衣くんも私の勘に可能性を感じているということだ。


「会えるといいんだけど」


そう呟きまた窓の外に目を向ける。

景色はいつの間にか都会の風景から、収穫が終わった田んぼ景色にうつり変わっていた。