二階席へ上がってくる前に買ってきたらしいホットココアを一口煽って「あったまる〜」とこぼした親友に肩を竦めた。

数ヶ月は会っていないはずなのだけれど、そんな時間さえ感じさせないようないつも通りのやり取りが少し嬉しい。


「久しぶり、恵理(えり)ちゃん」

「久しぶり! 定期テストさえ被ってなければすぐに会えたのに〜。ていうか話には聞いてたけど、神修(しんしゅう)って本当に冬休みが長いんだね? いいなぁ」


一週間ほど前に冬休みに入った私とは違って、あと数日登校が残っている恵理ちゃんは羨ましそうに唇を尖らせた。


「その代わり授業が大変だよ」

「全然いいよ、休み長い方が嬉しいもん! あ、これ冬休みの宿題?」


どれどれ、と私のノートを覗き込んだ恵理ちゃんは「これ高三の単元じゃん!」と声を上げて顔をしかめる。

私たちの高校は授業の半分が特別科目や実習に当てられているので、授業の進行スピードが一般の高校に比べてかなり速いらしい。

やっぱ今のままでいいわ、と肩を竦めた恵理ちゃんにくふふと笑った。


それからは近況報告に花を咲かせる。夏の大会で先輩が引退した恵理ちゃんは部活動で次の部長に任命されたらしい。今年の文化祭の実行委員も務めたらしく忙しいながらも非常に充実した毎日を送っているようだ。

自分とは全く異なる学生生活を送る恵理ちゃんが少し羨ましい。私もこういう学生生活を送る未来があったのだろうか、とここ数日は何度も考える機会があった。

一通り報告し終わったあと、恵理ちゃんはどこか気まずそうに眉を下げて私を伺う。




「あの、それで────何があったの?」