言祝ぎの子 漆 ー国立神役修詞高等学校ー



「りゅ、隆永さま……? もう起きてよろしいんですか?」

「おう。迷惑かけて悪かったな。社の復興もお前たちに任せっきりで申し訳ない。お前が指揮をとってくれてたんだろう。助かった」


いえ、と答えた自分の声は混乱と動揺が隠しきれていない。そんな私に気付いたのか、隆永さまはフッと表情を和らげて私の前に座った。

穏やかな顔だった。幸さまがまだ生きていらっしゃった頃のような。

光が消えたと思っていた瞳には、ちゃんと私が映っている。


「二つお前に大事な話がある」

「話、でしょうか」


ああ、とひとつ頷いた隆永さまは、文机の上に置いていた紙をとって私に手渡す。ざっと上から目を通し、我が目を疑った。


「お前、明日からここの権宮司な」


それはわくたかむの社に仕える神職が受け取る任命書だった。

私の名前、日付、そして権宮司に任命するという文言。間違いなく任命書だ。

権宮司といえば、宮司の次の位だ。宮司が不在の間は宮司と同等の権力を持つ。


「ちょ、ちょっと待ってください。急すぎませんか?」

「そうだな、急かもな」


ははは、と声を上げて笑った隆永さまを絶句してみつめる。

突然の任命もそうだが、この人が笑った顔を見たのが十数年ぶりだったからだ。


「後もうひとつ、歴代の宮司にしか引き継がれていないことを教える。芽が奪った宝物殿の國舘剣(くにたちのつるぎ)は────」


明かされた事実に私はまた言葉を失う。

その事実に驚愕したのもそうだが、その事実をなぜ私に教えたのかが理解できなかったからだ。

言いたいことを全ていい終えたのか隆永さまは僅かに微笑むと、「じゃ、あとはよろしく頼むな」そう言って私の背を押し部屋から追い出した。