幸いなことに、宝物殿と本殿の火はその場にいた神職だけで消し止めることが出来た。
刀傷を負った隆永さまたちも重症に至ることはなく、傷さえ塞がれば元の生活に戻ることができるらしい。
休暇が開けて戻ってきた神職たちの力を借りて、社の復興も始まった。しかし皆動揺が隠せないようで様々な憶測が飛び交う。休暇を申し出る者や退職を申し出る者が後を絶たなかった。
私自身も、なにか仕事をしていなければおかしくなってしまいそうな気がした。頭が理解することを拒んでいるようだった。
それから二週間ほど経った、ある日の夜。その日は夕方頃からしんしんと雪が降っていた。
私は薬と夕餉を持って隆永さまの部屋に向かった。酷い刀傷を負った隆永さまは、今も床から起き上がることができず一晩中うなされ続けている。
「宮司、真言です。失礼します」
返事は無いと分かっているがそう声をかけて、ふすまを開ける。
布団に目を向け、もぬけの殻になっていることに気が付き目を剥いた。
「隆永さ……え!?」
昨日まで寝たきりだったはずの隆永さまが、濡れ縁に立っていた。
私の声に気が付いて、ちらりと視線をこちらに向ける。
「真言か。丁度いい、そこに座れ」
昔と変わらぬ落ち着いた口調、色々と聞きたいことがあるはずなのに体は自然と言葉に従う。



