「たっ、たっ、大変です! 禰宜頭!」
ピシャンッと勢いよく社務所の扉を開けて転がり込んできた若い神職は、勢いを止めることが出来ずに鼻から中へ滑り込む。
いつもなら「扉は静かに開けろ!」と叱り付けているところだけれど、あまりにも勢いよく転んだ姿に「おいおい大丈夫か」と歩み寄る。
今朝、本庁の様子を見てきて欲しいと頼んだ下っ端の禰宜だった。
「それどころじゃないんすよ! 空亡がッ、あの空亡がついに祓除されたんすよ!」
鼻血を垂らした満面の笑みで顔を上げた禰宜に、思わず「は?」と聞き返した。
聞き間違いか? 今空亡が祓除されたと聞こえた気がしたんだが。
「だーかーらー! 空亡が祓除されたんですよ! 審神者さまと禄輪さまがとどめを刺したって噂っす! まだちゃんとしたことは分かんないんすけど、空亡が消えたのは間違いないって!」
己の聞き間違いではなかったらしい。得意げに語り始める禰宜の話に耳を傾ける。
「────ってなわけで、審神者さまはご自身の命と引き換えに空亡を滅して……」
「は? ちょっと待て、審神者さまが亡くなったのか!?」
禰宜の両肩を強く揺すれば「俺はそう聞きました」と答える。
なんということだ、思わずそう呟くと、何も分かっていない禰宜は「ホント凄いっすよね!」と私の言葉に同調する。
ちがう、そうじゃない。私は審神者さまを称えた訳じゃない。脳裏を過ったのは、神修にいらっしゃる芽さまだ。



