忘れもしない、13年前の冬。
空亡戦は激しさのピークを迎え、戦線へ駆り出されていたわくたかむの神職たちの顔には疲労が色濃く滲んでいた。
例年に比べてかなり質素な歳旦祭を過ごし、あれほど抗争が激化していた最前線も沖合の並のように静かになった。
宮司に許しをいただいて、神職たちには三日ほどの休暇を与え各々の家に帰らせた。
皆が連日討伐任務に駆り出されており、正月休みどころか日々の休憩ですらままならない状況だったため、つかぬまの休息を家族と過ごせるようにしてやりたかったのだ。
残った数人で社を維持するのは難しいと判断し、その三日間は社を閉じることにした。残ったものたちも身を寄せ合い、互いの功労を労った。
あれは休暇を与えた三日目の朝、その日は一段と冷え込む日だった。
底冷えする寒さで目が覚めてしまい、起きたついでに社頭の掃き掃除でもしようかと竹箒を持って外に出た。
朝日は登る直前で空は薄暗い。西の空には星がある。肌を突き刺すような澄んだ冷気に羽織の上から両腕を擦り本殿の前まで来た時、先客がいることに気付いた。
本殿に尻を向けてぼんやりと空を見上げて立っている神職に眉を顰める。
「休みだからって流石に気が抜けすぎではないか」そう注意をしよう歩み寄り、その人物が隆永さまであることに気付く。
「りゅ、隆永さま?」
恐る恐る声をかけた。彼が自らの意思で外に出ている姿を見たのは十数年ぶりだった。



