言祝ぎの子 漆 ー国立神役修詞高等学校ー


嬉しそうに、どこか煩わしそうに。審神者さまの話をする芽さまの顔は穏やかで、優しくて、年相応の少年だった。

話の中の審神者さまもまるで我が子のように芽さまを可愛がり、芽さまもその優しさに無条件に甘えているようだった。

それは私の目には、母の温もりを知らずして育った子供が安らぎの場所を見つけたような姿に映った。

芽さまのことを気にかけてはいたものの、薫さまに付きっきりだった幸さま。みなの良い関心も悪い関心も、常に薫さまにあった。

それにも関わらず弟である薫さまを大切になさっている姿に感心すると同時に不安もあったのだ。この小さな少年はいつ誰に甘えればよいのだろうか、と。


だからこそ、審神者さまと良いご関係が築けていることを知って、芽さまはもう大丈夫なのだと思った。良い御学友を得て自分の片割れと再会し、心を預けられる存在と出会い、きっと心に負った深い傷も少しずつ癒えてゆくのだろうと。


これをきっかけに全てが良い方向へ変わってけば、そんな淡い期待を抱き始めた頃、あの大妖怪・空亡(くうぼう)が現れた。

わくたかむの社にも討伐隊を編成し出陣するよう依頼があった。隆永さまを筆頭として各地に点在する社の神職たちと組んだ討伐隊は、数多くの死傷者を出し大敗を喫する結果となった。

そして神修は夏休みを迎えご実家に帰ってきた芽さまは、また人が変わったかのように暗い面持ちだった。

慕っていた恩師が、空亡戦で亡くなったらしい。