高等部に進学された頃には、もう帰省の度に私の後をついて回って学校の話をして下さることはめっきりなくなってしまった。
聞けば答えてくださるけれどそれがほんの少し寂しく、けれど大人になられたということだと言い聞かせ成長を喜んだ。
薫さまが幼少期に莫大な呪の扱いに苦戦なさっていたように、芽さまも成長するにつれ増えてゆく言祝ぎの扱いに思い悩んでいらっしゃった。
私はそのような事で悩んだことがないので、どういう事なのかを一度聞いたことがある。
『たとえば、風船に息を吹き込むでしょ。それを吹き込み続けるとパーンっと破裂しちゃうよね。そうならないように調整するのが難しくて。そのパーンが自分に向いてたら何とかなるんだけど、自分以外の誰かだったら取り返しがつかないことになっちゃうんだよ』
分かりやすい例え話を聞いた直後、大慌てで本庁へ駆け込んだ。
成績優秀だった芽さまは本庁でも評判が良く、すぐに特別待遇が設けられた。現審神者である奉日本志ようさまから、直々に力の使い方を学べるように取り計らっていただけたのだ。
それ以降、芽さまの口からは御学友と薫さまの名前よりも、審神者さまのお名前をよく聞くようになった。
「志ようさまって本当に凄い人だよ。俺の知らないことはなんでもご存知なんだ。最後にドヤ顔してくるのがちょっと腹立つけど」
「志ようさまって、手先がすごく器用でさ。この前袴の裾がほつれてたの直してくれたんだ。"ついでに可愛くしといた"って、花の刺繍も入れられたんだけど」
「志ようさまはお節介なんだよ。別に薫と喧嘩することくらいしょっちゅうあるのにさ、ちゃんと仲直りするまで俺とは稽古しないって」



