それからというもの、芽さまの笑顔が格段に増えた。
帰省する度に私の後をついて回って、薫さまや御学友と神修でどんなふうに過ごしたのかを嬉々として語ってくださった。薫さまのこの社での立場をご存知だからこそ、私以外に気軽に話せる相手がいないらしい。
芽さまの話に出てくる薫さまは見違えるほどにご成長なさっていて、半ば見放すように禄輪の元へ預けてしまったことがずっと心に引っかかっていた私はそれに救われる思いだった。
薫がね、薫がさ。
何度も何度も楽しそうに己の片割れの名前を呼ぶ芽さま。
まるで9歳の時に止まってしまった時間が再び動き始めたような、そんな気がした。
「薫がさ、一緒に帰省しようって行っても"絶対イヤ"って言うんだよね。禄輪さんとこで修行するのが忙しいんだって」
深夜、「お腹空いた」と社務所に現れた芽さまのために台所で握り飯をこしらえていると、芽さまはダイニングテーブルに突っ伏して気落ちした声でそう言った。
薫さまがご実家を嫌厭なさるお気持ちは察しがつく。幼かった彼にとって、この場所には辛い思い出の方が多いのだろう。
「でも真言も薫に会いたいよね?」
「そうですね。お元気な顔を一度でいいので拝見したいです」
「でしょ? 父さんだってきっと────」



