靴を脱ぐのももどかしそうに小上がりに上がってきた芽さまは、その勢いのまま私の元へくる。
「お帰りなさいませ、芽さま。おじいさま方へのご挨拶はお済みですか?」
「そんなの後でいいよ! それよりもさ、聞いて! 二学期から神修にくゆ────」
そこまで言って不自然に言葉を止めた芽さま、社務所の中を目だけで見回し、もどかしそうに自分を見る。
耳貸して、と袖を引っ張られ不思議に思いながらも体を傾けた。
「二学期から、薫が神修に通うんだって……!」
思わず目を見開いて芽さまの顔を見る。
鼻を膨らませ、何度も嬉しそうに頷く芽さまの頬は興奮で真っ赤に染っている。
芽さまの口から、その名前を聞いたのはとても久しぶりだった。
「担任から聞いたんだ、二学期から来るから世話してやれって。とうとう神修に来るんだよ、すごいよね、きっと禄輪さんのとこで沢山特訓したんだろうな。部活とかどうするんだろ? きっと寮にも入るよね! クラスの奴らにも紹介しなきゃ」
歳を重ねて聞き分けが良くなって、自分の立場を理解するようになって、わがままも駄々をこねることもなくなった。自分の感情を素直に表に出す姿はここ数年見た事がない。
そんな芽さまがこんなにも満面の笑みを浮かべて話しかけてきたことが、私は純粋に嬉しかった。



