「記憶にないんだけど……」
政治家みたいな私の発言に「馬鹿なのかお前」とお決まりの台詞が炸裂する。
「護衛つけてたって言ったろ。神職さまたちに守られてたんだから当然だろうが」
「な、なるほど」
「まぁそれに気付かないのもどうかと思うが」
ごもっともすぎる。
知らないところで守ってもらっている中呑気に恵理ちゃんとお茶したり図書館に出かけたり、真夜中のコンビニにアイスを買いに行ったりしていた。
冬休みに入ってから二回ほど真夜中のコンビニに出かけているので、間違いなくどちらかの一日は狙われ守られていたはずだ。
そこで「あ」と声を上げる。
「もしかして、さっき能天気って言ったのは……」
「夜中にアイスって、太るぞお前」
「その日は皆手が離せなくて、恵衣が担当してくれたんだよね」
薫先生がそう付け足して、ボッと赤くなった顔を両手で隠す。
真夜中にアイスが食べたくてコンビニに行く姿を、同級生の、しかも男の子に見られるなんて恥ずかしすぎる!
「み、見てたなら声かけてよ!」
そう抗議すれば怪訝な顔をされる。
「なんでだよ。用もないのに」
用がなくてもクラスメイトならそれくらいするでしょ、と突っ込もうとして恵衣くんが極端にコミュニケーションが下手くそなことを思い出し天を仰いだ。
そうだよね、恵衣くんは理由もなくクラスメイトとフレンドリーに会話したりしないよね……。



