言祝ぎの子 漆 ー国立神役修詞高等学校ー


昔薫先生のお母様が使われていたという部屋に入った私たち。

勝手知ったる様子でテキパキと座布団と電気ストーブを引っ張り出してきた権宮司。部屋の中はすぐに温かくなった。


「話を始める前に、巫寿さんには謝らなければならないことがあったんだ。先日、若い禰宜に頼まれてお使いに行っただろう」


ああ、とひとつ頷く。

節分祭の前日に風呂敷を和菓子屋へ届けるよう頼まれた。その際に人違いで水をかけられた記憶はまだ新しい。


「本来は毎月私が赴いていたんだが、外せない用ができて彼に頼んだんだ。しかし前に頼んだ時に店主の清志(きよし)さんに怒鳴られたようで、君たちに押し付けたらしい。本当に申し訳ない」


深々と頭を下げた権宮司に慌てて首を振る。

清志さんには謝ってもらったし、お詫びに食べきれないくらい沢山の和菓子をいただいた。

私もおそらく恵衣くんも気にしてません、そう伝えると権宮司は安心したように息を吐いた。


「清志さんとは話をしたんだね」

「あ、はい。それでずっと気になっていたんですが、清志さんとわくたかむの社はどういった関係が……?」


権宮司は目を伏せて小さく息を吐いた。


「清志さんは(さち)さまのお父様、つまり薫さまの父方の祖父にあたられる方だ」


清志さんの家に飾られていた写真立てを思い出した。

どうして気付かなかったんだろう。あの写真に映る男性と女性の顔を見た時、昔どこかであったことがあるような見覚えがある感じがしたんだ。

『幸も、幸の子供たちもアイツも……あの社のせいで』

憎しみの炎を宿した瞳、苦しそうに喉の奥から吐いた言葉。全てが繋がっていく。