神社実習で社務所の電話番を何度かしたことがあるけれど、一日に十数件かかってくる電話の八割が「幽霊を見た・妖怪を見た」という目撃情報だ。

そもそもそうやって通報してくれる人の方が少数派で、霊感がある人間は大抵そういうものを見ても無視する。

つまり我々の把握していない幽霊の方が多いわけだ。

会議室は皆の重い溜め息で溢れる。

福豆詰めと同じく根気のいる作業になりそうだ。


「なーなー! こう言うの使えねーかな?」


さっきから貸与されたパソコンを覗き込んでいた泰紀くんが、ネット検索の画面を私達に見せた。

真っ黒な背景にホラー映画のタイトルロゴにありそうな書体で「心霊現象報告サイト」とある。ネット掲示板のようなそれにはたくさんの人がずらずらとコメントを並べている。


「心霊現象報告サイト?」

「そ! オカルト好きの人が運営してるサイトみたいなんだけど、わりとガチの情報が集まるので有名なんだって」


へぇ、とみんなが興味深げにサイトをのぞき込む。

画面をスクロールすると、「〇〇で黒いワンピースで長髪の女の霊を見た」や「××でお下げ髪の子供の霊が歩いてた」などの詳細に書かれた情報が沢山寄せられている。


「ここで、あの町近辺で陽太くんの特徴がある霊の情報が上がってないか調べるんだよ。そしたら時短にならねぇかな?」


皆が目を丸くして泰紀くんを見る。急にたくさんの視線が自分に向いたのに驚いたのかドキマギしながら「なんだよ?」と私達を伺う。