「麻は何ともないような顔をして言ってるが、去見の明は先見の明と対になる授力だ。保有する者も今のところ麻くらいだし、非常に貴重な力なんだぞ」
「禄輪さんも三門さんも、いつも大袈裟なんですよ」
のほほんと笑う麻さんの横顔に、神主さんの気持ちが何となくわかった気がした。
確かにこんな素敵な女性が危機感ゼロでのんびり笑っていたら過保護にもなるよね。
「もしど忘れしちゃったことがあったら、私に言ってくれれば手伝うよ」
ふふふ、と笑った麻さん。ユーモアのセンスもあるらしい。
「それより、巫寿ちゃんのこと教えて。私神修には通ってなかったから、こっちの世界じゃ歳の近いお友達が少なくて。だから巫寿ちゃんと仲良くなれたらなぁって思ってたの」
そういえば麻さんとは何度か顔を合わせたことはあったけれど、いつも顔を合わせる時は何かあった時ばかりだった。
こうしてゆっくりと話すのは初めてかもしれない。
前に"自分も似たような境遇だ"って話してくれたことがあったし、授力を持っているところも似ている。
のんびり穏やかなところはどこか聖仁さんに似ていて、間違いなく私は麻さんのことを好きになるだろう。
「おい祝寿、おっさんどもは退散するぞ。泊まってくんだろ、酒付き合え」
「俺まだおっさんって年齢じゃないんすけど」
私達に気をつかったのか、立ち上がった禄輪さん。去り際に麻さんと私の頭をぐりぐり撫でて、お兄ちゃんを引き連れ出ていった。



