「なんか引っかかるんだよ。だからかむくらの神職にも話しておいた方がいいと思って。それなら当時の状況を知ってる斎守剣から話を聞いた巫寿の方が適任だろ」
神職の勘は当たる、とよく言われている。お兄ちゃか「なにか引っかかる」というのなら、鈴が盗まれた一件も無関係ではないのかもしれない。
わかったとひとつ頷き、外泊する旨を記した鳥の形代をわくたかむの社に飛ばした。
鬼脈はスマホが使えないのでちょっと不便だ。
そうと決まれば、と私たちは進路を変えて歩き出した。
白い息を吐きながら夜空を見上げる。月は薄い雲がかかって、どこか不気味な朧月だった。



