やっぱりそうか。私の予想は当たっていた。

貴重な宝物だけでなく、芸能の神を祀るうずめの社の歴史ある倭舞まで自分の代で失ってしまえば、信用どうこうの問題ではすまなくなってくる。

創建時から椎名家が代々引き継いできた倭舞だし血筋にこだわる気持ちは分からなくもないが、跡継ぎが見つからないのならば潔く親族以外の優秀な神職に引き継げばいいのに。

私がそう呟くと「それができれば俺らは拉致されてないよ」と疲れたように息を吐いた。その通りだ。


「それにしても、どうして鈴なんか盗んだんだろうね。盗んだ鈴をどこに隠したんだろう、志ようさん」

「だなぁ……そんなもん盗んで一体何を────は!? 今巫寿、志ようさんって言ったか!?」


少し面を浮かせたお兄ちゃんが私の前に回り込み身を乗り出す。


「え、お兄ちゃん犯人のこと聞いてないの?」

「俺は盗まれたことしか聞いてないぞ……! おいおい、犯人が志ようさんなら話は変わってくるぞ。混乱防止のために本庁が秘匿したのか? 志ようさんは亡くなる直前に盗んだってことになるよな、だとしたら空亡討伐と何か関係があるのか?」


お兄ちゃんは私そっちのけでブツブツと呟きながら何かを考え込み始める。

そして数秒後、パッと顔を上げると腕時計にちらりと視線をやって私を見た。


「巫寿、今日外泊できるか?」

「外泊? 明日休みだし連絡さえすれば大丈夫だと思うけど」

「だったら俺と一緒にかむくらの屯所へ行こう」


かむくらの屯所?と思わず聞き返す。