素っ頓狂な声で「四時間!?」と繰り返す。

まだ宝物殿のへ入ってきて10分程度しか経ってないのに!

恐らく斎守剣の結界かなにかで時間軸が歪んでいるのだろう。

慌てて外に出ると、庭園には言葉通り狂ったように私の名前を叫ぶお兄ちゃんがいた。

私の姿が見当たらず、失せ者探しの祝詞を奏上すると近くで反応はあるのに一向に見つからないのでパニックになっていたらしい。

疲れきった顔をした和来おじさんが「見付かったのか」と膝に手を付き息を吐く。一緒に探してくれていたらしい。


「どこにいたんだよ巫寿! 二時間近く探したんだよ!?」


青い顔をしたお兄ちゃんが私の両肩を掴む。ごめん、と首を縮めて斎守剣の付喪神に呼ばれて宝物殿の中にいたことを話す。


「ほら、だから言っただろ! 俺たちが妹を隠したわけじゃないって!」


腕を組んだ和来おじさんはお兄ちゃんにそう噛み付く。


「うるせぇ! 元はと言えばお前が巫寿を拉致したんだろ!」

「それはッ、そうだか……何でもかんでも人のせいにするな!」

「普段の行いが悪いんだよ!」

「年上に向かってなんだその態度は!?」


激しい口論を始めた二人。いい年した大人が情けない。

いつの間にか帰ってきていたらしいおばあちゃんが、庭園の騒がしさに気付いて顔を出す。

取っ組み合いの喧嘩に発展した大人二人の首根っこを容易く掴んで引き離すと「巫寿ちゃんはお庭で待っててね」とにっこり笑い二人を部屋へ引きずり込んでいった。