「私には無理です……! 自分で探してください!」

「それができぬから、こうしてお主に頼んでいるのであろう!」


うっと言葉に詰まらせる。

というか、今のは頼むと言うより命令形に近い気がするけれど。

唇を突き出し眉を顰めた斎守剣は、宝物殿の扉をじっと見つめる。


斎守剣は宝物殿の番人で御覇李鈴(おはりのすず)だけでなく、ここに保管されるすべての宝物の番をしている。きっと彼はここから離れることができない、探しに行きたくても行けないんだ。

目を逸らして頬を掻く。不安と後悔で揺らぐ斎守剣の瞳に少し胸が痛んだ。小さく息を吐く。

本当に、自分のお人好し加減にはつくづく嫌になる。


「……わかりました。でも探し出せるかどうかは約束できません」

「探してくれるのか!?」


勢いよく振り返った私に顔を近付ける。顔を引きつらせながらこくりとひとつ頷いた。


「彼女とゆかりのある場所は探してみます。でもそれ以上のことは本当にできません」

「それでも構わん! 頼むッ!」


両肩を掴まれて前後にガクガク揺すられる。そして「感謝する!」と感極まった様子でまたもやおいおい泣き出した。

ずびびと鼻を啜った斎守剣が顔を上げた。


「ではもう行け。外で狂ったようにお主の名を呼ぶ男がいる」


間違いなくお兄ちゃんだ。天を仰いで目頭を抑える。


「それ私のお兄ちゃんです……もう、そんなに時間経ってないのに大袈裟なんだから」

「そうでもないぞ。外は四時間程度過ぎた頃じゃろう。この中と外では時の進み方が異なるからの」