怪訝な顔をした斎守剣に泉寿は自分の母親であることを告げる。
するとより一層変な顔をして「ふむ」と顎に手を当てた。
「お主、泉寿の娘であったか。しかし妙だな。お前の言霊の資質はどちらかというとあの盗人の方ににている。この私が間違えるくらいだからな」
ごくりと唾を飲み込んだ。
斎守剣が「盗人娘と白い獣」と言った時、一瞬脳裏を過ぎったことがある。まさかそんなと否定したものの、彼の口からお母さんの名前が出たことで疑いは確信へと変わっていく。
ゆっくりと唇を開いた。
「もしかしてその盗人……おかっぱ頭の髪をした華奢な女の人のことですか」
斎守剣がぐわりと目を見開く。
「白い獣って、人の姿をした白髪の十二神使のことですか」
斎守剣が身を乗り出して力強く私の肩を掴む。
「お前、あやつらのことを知っているのか!?」
胸の前で手を握る。
やっぱりそうなんだ。十三年前、うずめの社の宝物殿に忍び込み、三種の神器・御覇李鈴を盗んだのは。
「その人は先代の審神者、奉日本志ようさん。そして彼女が使役していた十二神使の白虎です」
「審神者だと!? なぜ審神者が鈴を盗むのだ! その娘は今どこにいる!?」
志ようさんはもう、そこまで言いかけて「ん?」と眉根を寄せた。



