"この宝物殿を守る"
斎守剣はそう言った。その言葉に間違いがないのならば、ここは宝物────うずめの社に奉納された貴重な物品を保管する建物ということだ。
「あれ……でもたしか宝物殿って社の神職にしか見えないように結界が張られているって聞いたことがあるんですけど」
ううっ、と大袈裟に胸を押えた斎守剣はひとつ深く息を吐いてどうにも気まずそうな顔で目を逸らした。
「お……お主の霊力を例の盗人と勘違いして、ここに呼び寄せてしもうたのだ」
なるほど。宝物殿の番人に招かれたから私はここへ入ることが出来たというわけか。それにしても……。
「さっきから"盗人"って言ってますけど、誰かに何か盗まれたんですか?」
すると盗まれた当時のことを思い出したのか般若のごとく怒りに顔をゆがめた斎守剣。
しかしすぐにしゅんと肩を落し、膝を抱えてシクシク泣き出す。
本当に感情の忙しい人だな。
「……巻き込んだからには訳を話すしかあるまい。こちらへ」
斎守剣に手を引かれ、宝物殿の棚をすり抜けさらに奥へと歩みを進める。そして小さな台座の上に、紫色の絹布がかけられたなにかの前へ案内された。
斎守剣に目で促されその布をゆっくりと捲った。
「これは……鈴立て?」
四角い台座にマイクスタンドのような突起が付いているそれは、巫女鈴を立てかけるための鈴立てと呼ばれる祭具だ。



