御神刀、透けた体、人ならざるものの気配。もしかして彼は。
「あなたは……御神刀の付喪神ですか?」
「いかにも」
少し誇らしげに頷いた斎守剣は、すぐに神妙な顔に戻って項垂れる。そしてすかさず勢いよく床に額を打ち付けて土下座のポーズに戻った。
「此度の狼藉、誠に面目ない! 稚豊命にも昔から"お前は思い込みが激しすぎる"とお叱りを受けておったというのに……」
「あ……えっと。人違いだって気付いてもらえて良かったです。怪我もしてないし気にしないでください」
パッと顔を上げた斎守剣は感極まった表情で私の手を両手で掴むと、「感謝申し上げる」とまたおいおい泣き出した。
喜怒哀楽が豊かな人だな。人じゃないか、付喪神か。
よっこらしょと立ち上がり袴に着いた土埃を手のひらで払う。
少し待っておれ、と斎守剣は片手で制すと部屋の中をぐるりと見渡し掲げた右手をゆっくりと左から右へ動かした。
彼の手の動きに合わせて、四隅以外の松明に火が灯る。
十分に部屋の中が明るくなったところで、やっと自分がどこにいるのか把握することが出来た。
古びた本棚に積み重ねられた価値がありそうな書物に巻物。使い道が分からないけれどこれまた価値のありそうな何かの道具に、綺麗な細工が施された調度品や装飾品。



