そして嫌な予感は見事に的中、両親の実家である「うずめの社」へ引っ張ってこられた私。兄貴に電話して迎えに来いと言え、と命じられ、渋々お兄ちゃんに連絡し今に至る。
案の定激昂したお兄ちゃんは鬼のような表情でうずめの社へと乗り込んできた。
床が抜けてしまうんじゃないだろうかという勢いでズカズカと突き進み、おじいちゃんたちが待つ居間の前まで来た。
「ここからは大人の話だから、巫寿は外で待ってなさい」
振り返ったお兄ちゃんが不機嫌さを隠さずにそう言う。
「え、でも」
「大丈夫。すぐに奴らの息の根を止めてくるから、帰りにドーナツ屋さんでも寄ってから帰ろう」
「お兄ちゃん!」
「冗談だよ。ただ次はないけどな」
目を細めて鼻を鳴らしたお兄ちゃんは挨拶もなくピシャンと勢いよく襖を開けて、同じ勢いで閉めた。
冗談に聞こえないトーンだった。
唯一仲裁してくれそうなおばあちゃんは丁度出かけているらしく、おばあちゃんが帰ってくるまでおじさん達が無事でいられるかどうか。
私もおじさんはそんなに好きじゃないけれど、流石にいなくなって欲しいとまでは思っていないし、兄が犯罪者になるのは困る。
「……眞奉、お兄ちゃんをお願い」
小声で私の影に潜む眞奉に声をかけた。
ぬるりと私の前に現れた眞奉はひとつ頷き、また影に溶け込む。影はゆっくりと襖の隙間から部屋の中へ入っていった。



