「アンパンからあんこをくり抜いたらパン、だけどちょっとだけあんこが残ってるからアンパンだと気づくことができる。魂も同じで、自縛霊は荒魂状態だけど、和魂が消えたわけではない。だから"ほぼ別物"ってこと」


アンパンの例えと魂の構造が繋がって、なるほどと手を打った。

確かにアンパンからあんこだけをくり抜いたら別物になる。最初はなんの話しだか全く分からなかったけれど、理解しやすくていい例えだ。


「じゃあ自縛霊の対処法と魂の構造を理解してひとつ賢くなったところで、今日は解散にしようか。遅いしタクシーで社の前まで送ってあげるから帰る準備して」


はーい、と声を揃えた私たちは堤防の上に置きっぱなしにしていた鞄を取りに歩き出す。

ため息をついた薫先生はスウェットのポッケからスマホを取り出しどこかに電話をかけ始めた。


「────夜分にすみません。はい、そちらでお世話になっている神修高等部二年一組の担任です……ええ、お手数おかけしました。子供たちと合流しまして、このあと社まで送り届けます」


どうやら社と連絡をとっているらしい。普段は見せない「真面目な先生」の顔をしている。声もどこか余所行きの声だ。

思えばわくたかむの社は薫先生の実家で、社に務める人達はここ数年変わっていないと聞いた。おそらく電話相手の禰宜頭も知り合いなはずなのに硬い声色だった。

家を出る原因にもなった幼少期のことが関係しているんだろうか。