「じゃあ巫寿、自縛霊と地縛霊の違いを"心"と"場所"を使って簡単に説明して」
げ、と今度は私が苦い顔をする。
霊の分野が始まった頃に確認テストで出て躓いた部分だ。一応復習はしたけれど、不安要素が残るので恐る恐る口を開く。
「えっと……自縛霊は、自分自身の未練や罪悪感に囚われて「心」で動けなくなっている霊です。地縛霊は、死んだ「場所」や出来事に縛られてそこから離れられない霊です。つまり、自縛霊は内面的な縛り、地縛霊は外的な縛りによって留まっている点が違います」
薫先生の表情を伺う。にやっと口角を上げると「ちゃんと苦手を克服したね」と目を細めた。
ほっと息を吐く。どうやら正解らしい。
「いいね巫寿。違いがちゃんと頭の中に入ってる。じゃあ最後に恵衣、各霊を危険度が低い順に並べた上で今回の自縛霊に対する適切な祝詞を教えて」
「残留思念霊、浮遊霊、地縛霊、自縛霊、生き霊、悪霊、怨霊。自縛霊の修祓はまず祓詞を唱え、それでもダメなら鎮魂祝詞を奏上します」
一言も噛まず悩まずスラスラと答えた恵衣くんに「うん、完璧」と満足そうに指を鳴らした。
さすが恵衣くん。
そして恵衣くんの模範解答によって私は悪霊と怨霊を反転して覚えていたのが発覚したので、帰ってもう一度復讐しなきゃなと苦笑いをうかべる。
「じゃあ早速みんなで実践を、と言いたいところだけど……チーム規格外がもうやっちゃってるね」
薫先生が高架下に視線を向けてやれやれと肩を竦めた。



