薫先生ってあまり「勉強しろ」とは言わないけれど、「沢山遊べ」はよく言うんだよな。先生がそれでいいのかと若干思うところはあるけれど。
「あれ? 巫寿可愛いのつけてるね」
薫先生の視線が私の後ろでひとつに結い上げた髪に向いているのに気づいた。手を持っていくとガラス細工の髪飾りが手にあたる。
「あ、そうなんです。この間恵衣くんと出かけた時に買ってくれて」
「へぇ? 恵衣と? 出かけた時に? 買ってもらったんだ?」
満面の笑みをうかべてぐりんと首を回し反対側に立つ恵衣くんへ視線を向けた薫先生。
首がつってしまうんじゃないかと言うほど顔を背けた恵衣くんは、無言の圧力で薫先生の言葉をはねかえす。
「誰しも通る青春なんだから、そんなに照れなくても。にしてもよくデートに誘ったね」
「照れてない! デートじゃない! 俺は誘ってない!」
綺麗に三段返しした恵衣くんはぷりぷり怒りながら大股で歩いて行った。
あははっ、と声を上げて笑う薫先生。人が悪すぎる。



